2006年06月13日

放牧型の工務店について

執筆者野辺公一
●オプコード研究所

三浦ブログを読んでいたら
 三浦編集長ブログを読んでいたら、SAREXの「工務店力向上ワークショップ」の感想を兼ねて私のことが出ていた(5月25日付け)。よく分析してくれているな、と感心しつつ、「それはね」的な部分も感じたので、今回はこの編集長ブログに刺激を受けたお話となる。三浦編集長かく語りき その1
 三浦編集長は「野辺さんは、放牧している見込み客を自社の柵に導いていくために、WEB・ブログといったバーチャルなコミュニケーションだけでなく、現場見学会や山元見学会といったリアルなコミュニケーションをカレンダーに落とし込んで、そこに見込み客が自分の意思で参加してもらうよう促すことがポイントだ、と説く。これはその通りなのだが(略)取材していると、成果が上がっているところといまひとつなところに分かれていることに気が付く」と書く。

戦略的な連環性が理解されないと無理
 これは、当たり前の話で、自力で作り出した工務店と、なぞっただけの(本質的な戦略連環ができていない)工務店とではその成果に差が出てくるのは必然だ。
 三浦編集長の言う「いまひとつ」という工務店は、自分のノウハウとして多元的な見込み客とのコミュニケーションの連環ソフトが構築できていない。
 例えば森林ツアー。これらが「流行」しはじめたのもこの5年程度だ。そして、この場合は山側にも見込み客のツナー参加への満足度の提供、つまり説明能力等が問われる。
 「この人が私の家の木を育て、品質を高めるためのにここまでやっているのか」といった「納得感」を与えることができなければ効果はない。また、単なるリクレーションのつもりの参加者も多いことは計算済みでないと駄目なのだ。
 そうした、納得性の高い山側と工務店との付き合い方を見込み客たちはじっくりと見ているのだ。

セカンドオピニオンを求める参加者も
 住宅セミナーなるものもまったく同じで、情報提供側に余力のような感覚を参加者に与えることができないと説得力がない。くだらない時間だったと思われれば二度と参加しない。今どきの参加者は大人しく話を聞いているのではない。自分の考えている計画や他の工務店やビルダーと打合せ中にこのようなセミナーに参加し、セカンドオピニオンとして、工務店の意見を求めるといったセミナー参加者もいる。
 だから、いいセミナーだと終わった後の具体的な質問がビシバシ飛んでくる。この問いかけにきちんと答えていく(それもわが方が遥かによいといった話方ではなく)、そんな工務店が、こうしたセミナーで他の参加者たちの信頼性を醸成していく。

接近の自由性ということ
 基本的には、どこまでも自律的にこのようなコミュニケーション回路を用意しておき、顧客が工務店との距離をどのように図っていくのか、ということの「接近の自由性」を保証してあげるのが、もっとも大切なことだ。
 こうした「接近の自由性」ということが、多重化する見込み客から、本客という形での住宅計画やリフォーム計画の打合せプロセスを形成する重要な要素だと最近はつくづく感じている。
 また、住宅セミナーは、新規見込み客向けという設定では多分効果が薄い。むしろ、何度か参加している人たちも必ず参加してもらえるプログラムが必要だ。そして、この工務店と今折衝中、といった話が聞けるのも、こうしたセミナーに参加する満足度の一部を形成している。

三浦編集長かく語りき その2
 次に三浦編集長は以下のように指摘されている。
 「いくら放牧型といっても、例えば現場見学会に来てもらった見込み客がそのまままた遠くに行ってしまっては意味がない。少しでも警戒心を解いてもらって、興味を持ってもらって、自社の近くに留まってもらう必要がある。そのためのフロー・仕掛けはある。これについてはまた追って書きたい」と。

いいですよ、それで
 是非、そのお話はお聞きしたいが、私が三浦さんに言うとすれば「いやいや、いいんです。遠くにいかれても。遠くにいって再び戻ってくる、そういうスタンスが大切なんです」ということなのだ。
 自分の牧草地から別の牧草地へと移動する見込み客を追いかける程、無駄なことはない。自社の放牧地が魅力的なら必ず回帰してくる、という自信のあるコミュニケーション回路を有していなければ、放牧型などやれない。
 事実、そうして余所の牧草地から数カ月から数年して戻ってくる、というケースも多い、ということだ。ここに「接近の自由性」を保持しているのかどうか、ということが問題となる。
 このことは、その工務店が定常的に行っているプロセスコミュニケーションの「型」が安定し、自律的だからこそ戻ってくることが可能なのだ。
 こうしたコミュニケーション回路がいつでも開放されている、ということが理解されると、自ずから工務店の放牧地に留まる確率が高くなる。


見え透いた仕掛け嫌いな客たち
 自分のやれることをきちんと出すこと。オープンにしていくこと。これが大切で、それによって客同士が交流しあう(例えば工事開始時にブログづくりをはじめ、見学会で知り合った客同士でコメントし合うといったようなケース)、というような効果も副次的に生まれてくる。
 こうしたことは、現在のある意味でスレた顧客に対して、仕掛けとして行えることではない。仕掛けすればするほど、それが見え透く、というのが現在だ。そして、見え透くのが嫌な客ほど、工務店との家づくりを望んでいる。
 そうした状況の中で、私は放牧型の能力を工務店として持ったらどうですか、ということを言いたかったわけである。

三浦編集長かく語りき その3
 三浦編集長は次いで「ここは意見が分かれるところだろうが、放牧型管理とはいえ、コミュニケーションの場として展示場ないしショップを併設したような「コミュニケーション型事務所」があった方が、見込み客の立場からすると警戒心を解きやすく、親近感・興味がわきやすいな、と思う。(略)コミュニケーション型事務所の導入は一考の余地ありだと思っている。」

顧客に家づくり計画に「集中」させる空間と仕掛け
 このことについては、その前の日の「SAREXメンバーズサミット」でしゃべったことだが、私は「スマートオフィス」という概念で捉えようとしている。
 例えば、SAREXメンバーから事例としてでた話では、親が打合せをしている時に子どもの面倒をみる託児空間をもって、専門的に子どもたちの面倒をみるスタッフを置いている。これが顧客に対して打合せに集中力を与える。その効果の大きさが事例として出されたが、「集中」してもらう、ということが実は「スマートオフィス」を考える上で重要。
 「集中」とは紛れもない距離性の構築につながるからだ。
 今後「私だけを見て欲求」に応える仕掛けとしての空間をどうつくるのか、そして「ウェルカム(ようこそ)」という人的、空間的なソフトをどのように構築するのか、ということがとても大切な時代となってきた。
 近所の人さえ、そこが工務店の事務所だったと知らなかった、なんてことがあるほど、工務店は実は地域での存在感を失っている。
 コミュニケーションや関係性づくりの拠点として、これをどう考えるのか、これはこれからの切実な課題と私も考えている。
 それに関連して、工務店は経営者が「商品」の顔であることが多く、なまじ「住宅企業」的な顔をつくり出すと、顧客は社長と話をしたかったのに、ということで去っていくケースも多い。この辺りをどのような組織にしていくのかを吟味する必要がある。

 ということで、いささか長いブログ原稿となってしまった。反省。
posted by s-housing at 19:45| 野辺公一の21世紀工務店の源泉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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