2006年07月10日

平成18年6月2日、住生活基本法が制定されました。

執筆者秋野卓生
●匠総合法律事務所

 この住生活基本法は、わずか22条しかない法律です。

 しかしながら、その位置づけは、住宅に関わる法律の憲法的な存在であり、今後、住政策に関する法律は、この住生活基本法の趣旨に則り制定される事となるのです。

 今後の住宅政策においては、住生活基本法に示された基本理念と基本的施策を実現していくために、新たな基本計画(「住生活基本計画」)が作られることになります(住生活基本法第15条第1項)。

 従来の住宅建設五箇年計画では、国が5年ごとの建設目標戸数を決め、都道府県が区域内の事業量を決定するというトップダウン型のものでしたがこれを改め、国と都道府県が連携しつつ、基本計画(「全国計画」、「都道府県計画」)を作る体系となります。 新しい計画では、10年程度先の長期目標が掲げられ、政策評価や社会経済の情勢変化を踏まえて、5年ごとに見直しが行われる予定です。

 このように、住生活基本法は、国及び地方公共団体が取るべき施策の基準として規定されているものが主であり、民間の住宅会社が顧客に対して取るべき義務を規定したものはたったの1つしか条文がありません(第8条)。

 そのことから、住生活基本法を受けて住宅会社として具体的にどうすればよいのか、という点について、ピンと来ない方も多いのではないか、と思います。

 しかし、この住生活基本法の趣旨をエンドユーザーに説明し、皆さんの会社が住生活基本法の趣旨を遵守して住まいづくりを実践している事をアピールすることはコンプライアンスの実践として非常に重要な課題だと思います。

 例えば、住生活基本法第14条は、「国及び地方公共団体は、国民の居住の安定の確保が図られるよう、公営住宅及び災害を受けた地域の復興のために必要な住宅の供給等、高齢者向けの賃貸住宅及び子どもを育成する家庭向けの賃貸住宅の供給の促進その他必要な施策を講ずるものとする。」と規定しています。

 この規定に基づき、国土交通省は、「高齢者住み替え支援制度」創設に向け、中間法人を立ち上げ、高齢者が所有する戸建て住宅を借り上げ、リフォームするなどして若い子育て世帯に賃貸する事業を行うことを発表しています。

 ポイントは次のとおり。

  1. 高齢者の住み替え相談や借り上げ賃料の決定、賃借人募集などの業務は地域の不動産会社もしくは業界団体に委託する。

  2. 高齢者は高齢者向け住宅などの住み替え先に長期的に移転することが多いため、中間法人が高齢者から借り上げるときと子育て世帯などに貸し出すときの賃貸借契約は定期借家権を活用した長期契約とする。

  3. 国は、この中間法人に対し、空室が長期にわたった場合に家賃保証するため、5億円の基金を創設する。

  4. 高齢者の住み替えニーズを支援するとともに、子供を郊外の一戸建て住宅で伸び伸びと育てたいという若い世帯のニーズにも応えていくという狙いがある。

 この高齢者住み替え支援制度が現実に動き出したときに出てくる課題が「誰に貸すのか」という視点でしょう。

 高齢者はいくら住み替えをするからと言って、自分の大切な家の資産価値は維持したいもの。その大切な家の資産価値を低下させてしまうような人が入居したらもう、大変な事になります。

 六本木ヒルズの入居テナントであるライブドアや村上ファンドの代表者が逮捕された事から、六本木ヒルズのブランド価値が低下している模様です。

 かつて勝ち組の象徴としての「ヒルズ族」という言葉まで生んだ建物が、今、ブランド力の維持に向け、正念場を迎えているというのです。

 やはり、現在の借地借家法の法体系の整備と原状回復の範囲を特約で拡大できるようにするなど、制度普及のため、様々な施策を講じていく必要性があるでしょう。
posted by s-housing at 14:00| 秋野卓生の住宅法律相談所 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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