2006年08月21日

即クロージングと言うけれども、「請け負け」は避けなければならない

執筆者秋野卓生
●匠総合法律事務所

 最近、秋野弁護士は、契約内容を確定してから請負契約を締結するように、と指導しているが、そんな事を言っていたら競合他社に負けてしまう。もっと早く契約を締結しなければならないと思っているのだが、法的にリスクがない方法はないか?といった法律相談を受けます。
 
 確かに、顧客と出会ってから平均14日で契約を締結するという凄腕会社も現れているとのこと。モタモタしていたら、競合他社に顧客を奪われてしまう、という焦りの気持ちもよく分かります。

 しかし、平面図と立面図と建築予算が決まったから、「一応、契約をしましょう」というのでは、あまりに紛争リスクが高すぎます。
 よく、ビルダーさんは「契約後、いくらでも追加変更に応じますから」と言って顧客の背中を押して契約をするそうですが、次のような事案が発生したら、どうしますか?
(ある工務店からの法律相談)

 ある工務店が仕様を固めずに建築予算2000万円で請負契約を締結しました。この契約書には設計図書も見積書も添付されていません。
 契約を締結したことから、具体的な打ち合わせに入ったのですが、打ち合わせにはいると、施主からグレードアップの要請がたくさんあり、気がついたら請負代金が3500万円になっていました。
 「施主に対し、追加変更があったので、請負代金は3500万円になります」と伝えたところ、施主から「もともとの契約内容は決まっていないじゃないか!今回、初めて契約内容が決まったのであり、この契約内容の工事を2000万円で行うのが約束である。追加代金の支払いには応じない!」と言われてしまいました。

 こういった事案、実はよく発生しているのです。

 このような事案について、裁判所はどのような審理をすることになるのか、というと、まず、契約内容の特定を求めてきます。

 そうすると、契約内容の特定がなされず、請負契約が締結されている事案では、結果的に上記の施主の主張を採用する裁判所の見解が示される事もあるのです。

 そして、重要な事実。日本では赤字取引は適法です。

 ですから、赤字工事を2000万円で請けたという請け負けでも立派な契約内容と評価されてしまう恐れがあるのです。

 因みに、平成15年6月に最高裁判所建築訴訟委員会から発表された中間取りまとめにおいても下記のような指摘がなされています。
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/kentikukankei/torimatome.html

契約書の内容について

 契約書については,形式的に書面があればよいというわけではなく,契約成立時点での両者の合意内容を適切に盛り込んだものである必要があり,また,見積り等の契約前の交渉などの内容・結果を十分に反映したものであることが不可欠である。さらに,契約書の記載それ自体が読みやすく,かつ,分かりやすいものであることが望ましい。特に,施工契約については,その記載内容の充実や,設計図書の添付等資料の充実が求められる。

 この最高裁の建築訴訟委員会の指摘からも明らかなように、契約内容が不特定の契約は、法的紛争のリスクが高いと言わざるを得ません。

 やはり、施主との契約にあたっては、しっかり契約内容を特定してから請負契約を締結したいものです。
posted by s-housing at 11:43| 秋野卓生の住宅法律相談所 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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